餌の話・・その3(WCS)

今日は餌のお話その3です。豊里実顕地では、地元の安濃津地域の耕種農家さん達と共に、『稲発酵粗飼料』WCS(ホールクロップサイレージ)を使った、牛の育成に取り組んできました。

H18年に試験的な栽培をお願いしてから、今年で7年目となります。規模も50haを超えるものとなりました。『飼料イネ』の栽培は国の事業などもあり全国的に広がりをみせています。H21年からは『飼料ムギ』の活用も開始しました。これは全国的にも、まだまだ珍しい取り組みです。

他地域をみると、栽培から収穫・調製までを一貫して1軒でおこなわれる例も多いそうですが、豊里実顕地が参加している部会では基本的に、稲づくり(栽培・育成)は耕種農家さん収穫してサイレージに調製するのは畜産農家(ヤマギシ)と、それぞれが得意な分野を担当して分業で取り組んでいます。

そうすることで、もともと持っている機械を活かして新規導入を抑えることができますし、もともと持っている技術・知識(耕種農家さんは稲作、畜産側はサイレージづくり)を活かして専任することで安定した生産が可能になっていると思います。現在は規模が大きくなってきたので、耕種農家さんに専用収穫機をもう一台導入してもらい、収穫は2台体制でやらせてもらっています。

東海農政局のHPに当地域の詳しい解説が載っていますので、紹介します。見てみて下さいね。

東海農政局の資料(PDF)

 

豊里牛部門年表

今日は豊里実顕地の牛部門の変遷をご紹介します。

豊里実顕地には『肉牛部』『乳牛部』2つの牛部門があります。その中に堆肥の製造に関係する『有機質肥料』と、ワラ収穫や牧草関連を担う『自給飼料』部門があります。

同じ牛という動物に携わる部門ですので、結びつきの強い部門ではあります。特に豊里では『受精卵移植』という技術を採用していますので、お互いに持ちつ持たれつの関係にあると言えます。下記は大まかな年表です。30年以上の歴史があるのですね。

詳しい内容は機会があれば紹介したいと思います。

豊里実顕地牛部門年表

 

1969年 豊里実顕地誕生

1977年 北海道別海実顕地より4頭の乳牛を導入

1978年 実顕地生産物として「ヤマギシ牛乳」が誕生

1978年 ネオポリス開発農場で堆肥を使い始める

1980年 肉牛部発足

1985年 和牛の生産を始める

1990年 乳牛の成牛1300頭 毎日の催乳900頭

1992年 フリーストール牛舎ができる 牛舎を移転

1994年 受精卵移植による和牛の生産が本格化

1995年 肉牛4100頭に

2001年 麦ワラ収穫スタート

2002年 稲ワラ収穫を豊里周辺に集約

2006年 飼料イネ(稲発酵粗飼料)スタート

2009年 飼料ムギスタート

 

2012年7月現在 肉牛・約1900頭 乳牛・約600頭を飼育中

餌の話・・その2(TMR)

さて前回は、『発酵飼料』について書きましたが、今回は給餌方法のお話です。

一般的におこなわれている餌の給与方法には、分離給餌TMR法(total mixed rations)の2種類があります。

分離給餌は、それぞれの要素を別々に与える方法です。例えば、まず牧草などの粗飼料を与え、それを食べ終えた頃に濃厚飼料を与えて、夕方にまた粗飼料を与えるといった具合です。昔ながらの方法で、特に機械などを使わずとも行える給餌方法です。

TMR法は、必要な飼料をすべて混合して一度にすべての要素を与える給餌方法です。この方法の良い点は、すべて混ぜてあるので偏食・選り食いを防止して胃の状態を安定させられること、給餌の省力化などで、欠点としては専用の機械が必要で、粗飼料を細かく細断する必要があることなどです。

さて、豊里ではどちらの方法を採用しているかと言うと・・・・両方です

産まれてから6ヶ月くらいまでは分離給餌で、乾燥牧草やペレット状の購入飼料を与えます。それから段々とTMRの自家配合飼料に切り替えていきます。

TMRの給餌は、『ミキサーフィーダー』で行います。これはその名の通り、混ぜ合わせる『ミキサー』と餌を与える『フィード』が一台でこなせる車のことです。

荷台の中は、大きなミキサーになっていて『オーガー』と呼ばれる大きなスクリューがついています。今豊里で使っているのは横方向に4本のスクリューがついているタイプの車です。その他にも『バーチカルミキサー』と呼ばれる縦にスクリューがついているタイプもあります。

この他にも、ワラを細断する機械だとか、大型のホイールローダーだとかTMRする為にはいろいろと装備が必要になってきます。

また、フィーダーの操作はなかなか難しいです。慣れれば簡単に操作できますが、運転しながら、測りをみながら、餌の出方を調整して・・・と両手両足を駆使して操作します。なかなか楽しいですけどね。

前回紹介した『発酵飼料』がうちのTMRのベースとなるので『発酵TMR』などと呼んでいます。

 

 

 

餌の話・・その1

皆さん、牛は普段どんな餌を食べているかご存知ですか?

豊里では牛に与える餌について、様々な取り組みがなされています。今日はその一つを紹介したいと思います。

実は牛ちゃん達、あの大きな体に似合わず、すご~くデリケートな生き物なんです。食べ物の内容が変わったり、質が安定しないと、すぐにお腹を壊したり病気になったりします。特に腐ったりカビたりと変質しやすい夏場の餌管理は重要なテーマとなります。

そこで今年から取り入れているのが、発酵飼料です。厳密に言うと以前からずっと取り組んではいたのですが、今年から方法が変わりました。これは殆どの餌のベースとなる基餌に取り入れられています。

詳しく解説していきますね。まず、豊里ではほとんどの餌を自家配合しています。仔牛の段階では購入飼料を多く使っていますが、育成・肥育段階になると殆どが自家配合の餌に切り替わります。そのベースとなるのが基餌の発酵飼料です。この基餌に段階に応じて要素を足していきます。

主となる材料は『おから』です。そう、豆腐をつくる過程で出来るアレです。『卯の花』などで人間も食べますよね。豊里には毎日トラックで大量の『おから』が運ばれてきます。そのおからに、ふすま(麦の糖)やもみ殻・醤油粕などを混ぜて、密閉・発酵させます。

これ自体は前からやっていたことなのですが、以前はサイロに詰めて3日程で使用していました。しかし今年からは、昨年導入した『細断型コンビラップ』を活用したラップロール体系に進化しました。ラップロールの特徴としては、発酵品質の安定・保存管理のしやすさなど利点が沢山あります。

『おから』は水分が多く夏場は変質しやすいのですが、入荷してすぐにラップしてしまうことで無駄なく活用することができ、飼料の質も安定するというので、良いことずくめですね。

現在は1ヶ月半程寝かした物を、毎日必要な量だけ開封して使っています。開けたときには、甘くていかにも美味しそうな匂いがしていますよ。餌を見る機会があれば、匂いも嗅いでみて下さいね。